英NMAが報道の重要性訴えるキャンペーン実施
英国新聞界は10月31日から11月6日まで、信頼できる報道の社会的重要性を訴求するキャンペーンを実施した。キャンペーン週間は「ジャーナリズムは重要だ」(Journalism Matters)と銘打ち、従来の「地方紙週間」に代わり英ニュースメディア協会(NMA)が2019年から毎年実施している。20年以降は秋に取り組んでいる。
トラス政権の発足に伴い文化相に就任したミシェル・ドネラン氏はキャンペーンに当たり「私はジャーナリズムの擁護者になる」と題する各紙掲載用の文章を寄せた。メディア産業がデジタル時代に繁栄することを保証するのが喫緊の課題だとした。
トネラン文化相寄稿
https://newsmediauk.org/wp-content/uploads/2022/10/Journalism-Matters-Culture-Secretary-Op-Ed.pdf
最大野党・労働党のキア・スターマー党首もキャンペーン週間向けに寄稿した。プラットフォーム事業者と報道機関の間の公平な競争条件を整える政府の対応が遅れていると指摘。ジャーナリズムの持続可能性は脅かされているとした。労働党はプラットフォーム事業者に記事使用の対価を負担させ、報道機関に対しデータと記事に関する大きな支配権を持たせることを支持すると述べた。
スターマー氏寄稿
https://newsmediauk.org/wp-content/uploads/2022/10/Journalism-Matters-Sir-Keir-Starmer-Op-Ed.pdf
ウクライナの独立発行者協会の代表は、同国メディアの直面する課題をキャンペーン向けの寄稿に記した。記者の多くは防空壕の中で仕事を続けており、電気の供給だけでなくインターネットがつながらないこともままあると苦境を吐露。戦争犯罪を世界に報じることと、ウクライナの素晴らしい人々について伝えることへの意欲は旺盛だとした。
ウクライナの独立発行者協会の代表寄稿
https://newsmediauk.org/wp-content/uploads/2022/11/Journalism-Matters-Oksana-Brovko-Op-Ed.pdf
キャンペーンの一環として、全国紙と地方紙のキャンペーン報道に読者が投票する顕彰活動もある。今年は大衆紙サンと地方紙エクスプレス・アンド・スター(ウエストミッドランド)が栄誉に輝いた。
サンのキャンペーンは、障害を抱えた子供を持つ家庭のうち必要な支援を受けているのは4%にとどまるとの統計を端緒とする。必要な支援を受けるために苦闘する親の声を伝えた。
https://newsmediauk.org/blog/case-studies/give-it-back/
エクスプレス・アンド・スターはフードバンクと連携し、クリスマス前に食料の在庫を増やすよう取り組んだ。この取り組みは毎年、シュロップシャーの地元紙とともに実施している。寄付が大幅に増え、地方紙のブランド力を示したと評価された。
https://newsmediauk.org/blog/case-studies/the-feed-a-family/
他紙のキャンペーン報道は以下で紹介されている。
https://newsmediauk.org/making-a-difference/
英全国紙が組織するマーケティング団体ニューズワークスが11月3日に発表した世論調査によると、英国民の62%は生活費の高騰を巡る報道で記者は重要な役割を果たしていると考えている。36%は危機が始まった時よりも記者の役割の重要性は大きくなっていると答えた。
この困難な時代を切り抜けるのに役立つ記者の役割としては、「光が当たることのない重要問題の提起」「読者の決断に資するような情報・助言の提供」「複雑な政策の日常生活への意味の解説」などが挙げられた。
(2022年11月11日)