米NMAが生成AI巡り白書、記事無許諾使用を問題視/米NMA、広島AIプロセス巡りG7に書簡
米NMAが生成AI巡り白書、記事無許諾使用を問題視
米ニュース/メディア連合(NMA)は10月30日、生成AI(人工知能)システムの学習のために会員新聞・雑誌発行者の著作物の複製が横行している現状に警鐘を鳴らす文書(白書)を発表した。生成AIの学習のために著作物を複製する行為は著作権の侵害で公正利用には当たらないと強調。生成AIシステムが大量の記事無許諾使用によって生み出す新たな商品・サービスは報道機関と競合することも多いと警告した。
生成AIの生成物が出典を記さず、情報源へのリンクも張らないことから、利用者がニュースサイトをクリックしたり購読したりする機会が減り、報道事業に回復不能な損害を与えているとした。
NMAは生成AIが持つ潜在的可能性を認識し、その応用を幅広く支持していると指摘。しかし、その開発により、地域社会に情報を伝える記事の作成に膨大な時間と資源を割いている報道機関・記者が犠牲になってはならないと強調した。持続可能で責任ある技術開発のため、生成AI開発者と協力する用意があるとした。
白書には、生成AIモデルの強化のために開発者がいかに報道コンテンツに依存しているかを、研究者に委嘱して分析した結果が含まれる。それによると、対話型AI「チャットGPT」などを支援する大規模言語モデル(LLM)の学習に使う厳選されたデータセットは、オープンソースの汎用データセットよりもニュース記事を最大で100倍多く使用。グーグルの巨大データセット「C4」の使う上位10サイトの半分は報道機関のサイトだとの研究もあるとした。
NMAは同日、AIと著作権を巡る著作権局の意見募集に応じた。報道機関の表現コンテンツを商用生成AIの学習・開発に使用することは報道ビジネスと競合したり、報道ビジネスを毀損(きそん)したりすることを、著作権局は明確にすべきだと主張した。このほか、権利保護された著作物を生成AI学習に使用する際の情報開示、自主的な集中許諾を含む許諾モデルの開発、プラットフォーム事業者との不均衡な交渉環境を是正する方策の支援を訴えた。
〔生成AIと著作権局への意見提出についてのブログ〕
https://www.newsmediaalliance.org/generative-AI-white-paper/
https://www.newsmediaalliance.org/release-news-media-alliance-study-finds-pervasive-unauthorized-use-of-publisher-content-to-power-generative-AI-technologies/
米NMA、広島AIプロセス巡りG7に書簡
米ニュース/メディア連合(NMA)など米欧のメディア3団体は10月19日、先進7か国(G7)が生成AI(人工知能)の国際的なルール作りの枠組み「広島AIプロセス」で進める開発者向け指針と行動規範作成の努力を支持するとの書簡を7か国政府と欧州連合(EU)に送った。書簡には日本新聞協会を含む世界26の報道団体が9月に発表した「世界AI原則」を添付。AIは現代の最も強力な課題の一つを提起しており、断固たる行動によってのみ解決できると指摘。知的財産保護や透明性確保、説明責任を求める世界AI原則を、広島AIプロセスにおける指針と行動規範を検討:する際に考慮に入れるよう求めた。
NMA以外の団体は米デジタル・コンテンツ・ネクスト(旧オンライン発行者協会)と欧州発行者評議会(NPC)。NMAによると、日本政府向けの書簡は河野太郎デジタル相宛て。
書簡はAI開発の国家による規制も引き続き重要とする一方、G7の枠組みで国際基準を作り、規制当局が従うことの意義を強調した。国際的な標準化も法的確実性を増し、ルールを回避する悪質行為を難しくする点などで有益だとした。
G7は30日、広島AIプロセスに関する首脳声明を出した。開発者向けの国際指針と行動規範で合意し、順守を求めた。
News/Media Alliance Commends G7's Hiroshima AI Process, Calls for Strong Copyright Protections - News/Media Alliance (newsmediaalliance.org)
(2023年11月16日)