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2013年 3月5日
本当に苦しんでいる人へ
福井「ふくい 介護のトビラ」
誰もが年を取ったり病に倒れたりして、人の助けを借りなければ生活できなくなる可能性がある。介護する人、される人の生の姿と、彼らが得た教訓を届ける連載が1月に始まった。
初回は認知症の母親をあやめそうになった45歳男性。実名で経験を明かした。仕事をやめ1人で介護に専念。仕事に偏っていた人間関係は退職で絶たれた。介護を始めて3年目のある日、追い詰められて母の首に手を掛けた。普段では考えられない力で振り払われ、我に返った。ようやく施設に頼ろうと決めた。「在宅介護には限界がある。1人で抱え込まないで」と訴える。
91歳女性は、「施設に入れと息子から言われるとつらい。だから自分で決めた」と話す。3年前、体力づくりのための軽い運動で背骨を折った。退院後は、家族の手を借りなければ満足に生活できない。気を遣うのが嫌で入所を決めたが、寂しく思うときもある。
脳出血で左半身がまひした男性をデイサービスを利用しながら在宅介護する家族。口げんかもするが、遠慮せずに言い合うのが家族と受け止める。
受診が遅れ、意思疎通が困難になった認知症の母親を施設に預けた女性。本人抜きで決めた入所に心残りもある。普段と様子が違うと感じた時に受診していれば、本人が心の準備をする機会を逃さずに済んだかもしれない。
2月10日に福井県で起きた介護殺人に絡め、同21日には社会面に関連記事も掲載した。
世代を超えて共感できる連載を目指す。福井県は3世代同居が多く、"介護は家族がするもの"という意識が強い。担当する文化生活部の伊藤直樹記者は、「本当に苦しんでいる人が、踏みとどまってくれるような記事を書ければ」と話す。連載は毎週木曜に掲載。3月末まで続く。(さ)