2014年 2月25日
証言記録する最後の機会

信濃毎日「戦後70年の記憶」

 第2次世界大戦の終結から来年で70年を迎える。戦争体験者の高齢化が進み、つらい記憶を胸にしまい込んだまま亡くなった人は多い。一方で、「生きているうちに一言でも体験を話しておきたい」と、重い口を開き始めた人たちもいる。証言を記録する最後のチャンスを捉え、昨年10月から月1回のペースで掲載している。

 これまでも毎年、終戦記念日や憲法記念日に合わせ、長野県に縁の深い満蒙開拓団や松代大本営などを軸にした企画を展開してきた。今回の連載では、学徒出陣を経験した男性(91)や勤労動員された女性(85)など、戦争に国民全員が関わっていたことが分かるような体験談を意識的に取り上げている。

 これまで証言を残していない体験者を探すために、旧軍の名簿を丹念に調べたり、何度か紙面で取り上げたことのある人からの紹介をたどったりしている。ただ、「これまで話してこなかった人に話してもらうためには、3~4回、場合によってはもっと足を運ばないといけない」(取材班デスクの小池浩之報道部次長)という。

 70年前の記憶だけでなく、つらい思いを抱いたまま彼らがどう生きてきたのか、激変する日本の現況をどう見ているのかも丁寧に聞いた。特定秘密保護法に全てが極秘だった戦中を思い起こし、「安倍政権が示す集団的自衛権の行使容認や自衛隊の国防強化といったニュースに軍靴の響きを感じ、むなしさを覚える」という沖縄戦に参戦した男性(90)。マレー沖海戦に出撃した元海軍少尉(93)は、集団的自衛権行使の議論に「いろいろな立場を想定すると結論が出ない。国を守るとはどういうことなのか」と悩む。小池氏は、「彼らが今の時代をどう見ているのかを伝えることは、日本が今後直面する状況を想像する一つの手掛かりになるのではないか」と話している。 (さ)

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