2014年 3月4日
あえてタブーに切り込む

福島民友「原発災害 『復興』の影」

 福島第一原発事故の発生から3年が過ぎようとしているが、復興に向けた動きは鈍く、状況は複雑さを増していく。被災者同士のあつれき、除染の実態、自主避難者の思いなど、昨年9月に始まった連載は、地元紙として取り上げにくいテーマに切り込んだ。

 デスクを務める小野広司報道部長は「地方紙は読者との距離が近く、記事が地域の中でハレーションを起こしやすい」と話す。次々と変わる状況、錯綜(さくそう)する被災者の思いを前に、あえて書かないことも多かった。しかし、原発事故をめぐる状況は改善せず、むしろ混乱を増していく。「このまま放置していては、問題は解決しない」との思いが連載の出発点だ。

 第1部の主題は「帰れない」。昨年末までの復興政策は全て、「いずれは故郷に帰る」ことが根底にあった。時を経るに連れ、放射線量の下がらない場所が明らかになり、帰ろうとする人々も置かれた状況を実感する。移住先にどう溶け込むかといった問題や、復興政策のありようを問い掛けた。

 第3部は「貯蔵する」。福島県民の誰もが胸に秘めつつも、言い出せないことがある。「中間貯蔵施設は双葉郡に置くしかない」。除染を進める上で必要だが、人として、避難者らに土地の明け渡しを求めることができるのか。関係者の複雑な思いをつづった。政府が国有化を検討している地域に自宅のある男性は「吹っ切れた」と話す一方、「できればいつか、人が住める場所に戻してほしい」と揺れ動く。

 1月からの「自ら逃れる」は、地元紙として載せづらかった自主避難者の思いを掲載した。一部の読者からは「自主避難者を擁護するのか」との反応が寄せられた。小野氏は「善しあしではなく、俎上(そじょう)に載せることで解決に向けた議論が深まれば」と語る。連載は今後、低線量被ばくといった健康被害の問題などを取り上げる。(三)

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