2014年 3月25日
表面化しにくい問題を取材

宮崎日日「だれも知らない~みやざき子供の貧困」 

 宮崎県中央部のとある家庭。台所は汚れ、部屋中に脱ぎっ放しの洋服が散乱する。床はべたつき、室内の異臭が鼻につく。両親共に病気を患い、職に就いていない。一家6人は障害年金と生活保護費の17万円で毎月生活する。四男(2)はいまだ粉ミルクしか飲まず、体重は8キロと2歳児平均12キロを下回る。長男(7)はまだ紙おむつが手放せない。

 宮崎市内の別の家庭では、女子中学生(15)が高校受験を控える。母親の月収12万円では学習塾の月謝を払えず、入塾に傾く気持ちを押し殺し一人で受験勉強に励む。

 親の病気、離婚、失業は子供の生活に暗い影を落としている。

 連載は全10部前後を目標に、1月から続く。1、2部では親や子が置かれた状況を描いた。子供を取り巻くつらい現実に、記者たちも取材する度に気が重くなったという。

 生活に困窮している家庭はもともと地域から孤立している場合が多い。デスクの高見公子報道部次長は「取材でより孤立したり、偏見の目にさらされることのないよう気をつけている」と話す。

 取材班で中心的役割を担う新坂英伸報道部記者は、「取材は親の年収やつらい過去など、失礼なことも聞かなければならない。信頼関係を築くことに苦労している」と言う。取材対象を見つけることも難しい。子供の貧困は表面化しにくく「見ようとしないと見えない問題」(高見氏)だからだ。

 「だれも知らない」は、実際の育児放棄事件を基にした映画のタイトルだ。取材現場の光景と、映画の描写が重なって見えたことから、是枝裕和監督の許諾を得て使用した。映画は是枝氏を招いての講演でも上映した。新聞連載に加え、映画のイメージを重ね合わせることで、子供たちの貧困を読者に理解してもらうことを狙っている。(夏) 

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