2014年 9月23日
地元特産品の危機を共有

静岡「ウナギNOW」 

 庶民のささやかなぜいたく、滋養食として親しまれているウナギ。しかし、在来種のニホンウナギは6月に国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定され、今月17日には日本、中国、台湾、韓国が資源管理の在り方について合意した。養殖うなぎは天然の稚魚を人の手で育てたもの。ふ化から成魚までを管理する「完全養殖」はまだ研究段階だ。

 こうした中、全国有数の産地であり、「浜名湖産」のブランドを抱える地元紙として、生産、消費、研究などさまざまな角度から光を当て、5回連載でウナギの「今と未来」を考えた。

 佐藤学経済部長兼論説委員は、将来の国際取引規制に備えるとともに、「『ニホン』の名を冠した種が、また絶滅するかもしれないという危機感を訴えたかった」と狙いを話す。

 夕刊の強化を図る紙面づくりの方針と、確実なカラーで幅広い年代の読者に話題にしてもらうため、1日付から夕刊1面で展開した。

 初回は、漁業者の声から全国的な天然ウナギの漁獲高を紹介した。1982年の1927トンから、2012年には165トンに激減。静岡県内では、統計をとらなくなるほどに減った。県内の養殖業者数も20年前の半分以下だ。これを受けて、2回目以降は輸入や消費の在り方、稚魚が遡上(そじょう)する川の環境改善の取り組み、生態解明と完全養殖実用化に向けた研究の最前線―を紹介した。

 「将来に備える」観点から取材も人脈開拓を重視し、本社経済部・総支局から4人と、多くの記者を投入。中心を担った湖西支局・金野真仁記者は「生産現場を伝えるため、漁師の生の声にこだわった」と語る。表に出たがらない気質に加え、「不漁」の報道が消費者の買い控えにつながることを懸念して口が重く、漁協の市場に毎朝通いつめて取材に応じてくれる相手を見つけたという。(洋)

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