2014年 10月14日
日常生活の問題積み上げる

佐賀「たそがれの時代 さが幸福の肖像」 

 地方を襲う人口減少と少子高齢化は、地域社会をさまざまな面で疲弊させている。地域コミュニティーの機能低下や老老介護の問題など、住民の日常生活に直結する問題を通して地域の未来を考える通年連載だ。

 特別な問題や珍しい事例を取り上げるのではなく、記者自身が地域の一員として暮らす日常の中に、普通に転がっている問題を取材している。一人暮らしの高齢者が買い物に困っていることや、自治体の消防団員が減っていること―。桑原昇報道部デスクは「問題を一つ一つ積み上げていくことで、今の社会が向かおうとしている時代を描きたいと考えている」と話す。

 認知症で運転の仕方を忘れても車に乗りたがる父に困る家族や、介護の長期化を懸念して義母に胃ろうの処置を施すことをためらう介護施設で働く女性など、8月までの前半部分では、個人のライフストーリーに光を当ててきた。青木宏文報道部特報班キャップは「狭いつながりの中で、家族や近所に対する不平不満を聞いている。記事をきっかけに関係が悪くなると困るので匿名にしているが、込み入った話を聞くのは難しい」と打ち明ける。老老介護に関し、ある家族に取材を申し込んだところ、なぜ母をさらし者にするのかと反対された。しかし、連載の意義を粘り強く話して説得した。

 最期を自宅で迎えたいと考える人が8割に上ることや、県営住宅に入居する世帯のうち65歳以上の単身世帯が16.8%を占めていることなど、さまざまな調査データを合わせて掲載。連載では限られた人しか紹介できないが、その背景にたくさんの人が同じ問題を抱えているということを伝えるためだ。

 5日から始まった5章以降は、認知症患者を地域全体で見守る活動などを紹介しながら、今後の街づくりを探る。(さ)

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