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2015年 8月4日
見えない史跡の価値継承へ
佐賀「再びの船出 三重津―世界遺産登録決定」
7月5日、佐賀市の三重津海軍所跡が県内で初めて世界遺産に登録されることが決まった。日本の近代化の過程を示す「明治日本の産業革命遺産―製鉄・鉄鉱、造船、石炭産業」(8県23施設)の一つだ。幕末期の佐賀藩海軍施設で、蒸気船製造や洋式船修理が行われるなど高い技術が集結。特に船の修理施設(ドライドック)は、西洋技術の受容過程が分かるとして高く評価された。
しかし、地下遺構のため史跡自体を見ることはできない。見えない史跡をどのようにアピールし地域活性化につなげるか、遺跡をどう保全し活用していくか―三重津が抱える課題はいくつもある。報道部の辻村圭介デスクは「問題を伝えつつ将来につながる視点で取材を心掛けるようアドバイスした」と話す。世界遺産登録決定を受け7日から「観光振興」「価値継承」などをテーマに計3回連載した。
世界遺産登録決定により、県内に点在する他の観光施設への好影響や地域経済への波及効果に期待が高まる。山口貴由記者は「観光資源や経済効果は当然期待されるが、地域にとっての史跡の価値を探るような連載にしたいと考えた」という。
世界遺産に登録されると管理者である市は半永久的に保全の責任を負うことになるため、後世に史跡の価値を継承する活動がこれまで以上に重要となる。見えない史跡を伝えるためにボランティアガイドを養成する取り組みも始まった。地元の小さな取り組みを丹念に取材し、「未来につながる地元の活動の『芽』を見つけて伝えた」(山口記者)。
この連載に先駆け、5月に歴史的意義に迫った「読み解き 三重津海軍所」を上下で掲載。世界遺産登録決定を受け、同じく明治の産業革命遺産を持つ他県の地方紙と共同で特集紙面も展開した。(愛)