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2015年 9月1日
文化継承の動き後押し
下野「天明鋳物の里 佐野―伝統再生への道筋」
かつて「西の芦屋、東の天明」として、全国に知られた鋳物の産地・栃木県佐野市。千利休も使用した「天明釜」で有名だ。しかし、近年は鋳物師が激減している。
2007年には市内の鋳造業者による「天明鋳物伝承保存会」が鋳物を生かしたまちづくりを提言するなど、再生への動きが活発化している。こうした機運を高めようと、7月14日付から毎週火曜地域面で連載を展開。佐野支局の大平正典支局長と岩崎駿祐記者の2人が取材を担当している。
これまでも保存会の活動などを単発で取り上げたことはあった。大平氏は「盛衰の歴史から現在の担い手まで体系的に紹介し、地域に素晴らしい文化があることを広めたいと考えた」と説明する。
天明鋳物の起源は一説に、939年、土地の有力者が現在の大阪府から鋳物師を招き軍器を作らせたという。翌年の平将門の乱で、将門の命を奪ったのが天明鋳物の矢尻かもしれないという逸話を紹介。江戸時代に最盛期を迎え、明治以降、アルミ製品が普及したことで需要が減少した。
県内の鋳物師は現在4人。技術の継承に奮闘する人、キャラクターの人形焼き器など時代の要請に合わせて仕事の幅を広げた人、それぞれ異なる方法で再生を目指す姿を紹介した。
連載は計12回を予定。今後、同じく鋳物の名産地だった福岡県芦屋町の取り組みを伝えていく。芦屋での生産は江戸時代に途切れたものの、前町長の尽力で後継者育成や施設作りなどに取り組み、再生の歩みを進める。
佐野市は05年、田沼町、葛生町を吸収合併した。鋳物の中心地は旧佐野市に位置し、2町にとって縁遠いものだった。大平氏は「鋳物再生への動きを後押しし、新市の一体感を高める一助になれば」と語る。(梛)