2016年 1月1日
地場産業支える企業の熱意

山陽「ジーンズ開拓史~瀬戸内の50年」

 世代、性別、国境を超えてはかれ続けるジーンズ。瀬戸内地域では1965年に岡山県倉敷市で生産が始まり、ファッション界では、世界にも名の知れた地場産業となった。50年目となった2015年、各工程を支える企業の取り組みを4月から5部構成で伝えた。

 桑原功経済部長は「地元の人にもあまり知られていない、個々の企業で働く人々や彼らの苦労を知ってほしかった」と説明する。瀬戸内地域は一企業が製造の全工程を担うのではなく、裁断や縫製など細分化された過程を担う中小規模の企業が集積している。ジーンズ産地としては珍しい形態だ。中には表に出たがらない業者もあったものの、業界に精通した記者が丁寧に企画趣旨と熱意を伝え取材を進めていった。

 中心となったのは、10年から繊維産業を担当する重成啓子記者だ。「1社に最低3回は足を運び、特徴を捉えて切り口を定めることを心掛けた」と話す。60年代からジーンズを作り続ける老舗メーカーから、ミシンを扱う工場まで約30社が登場した。本記とは別に産業の歴史やブランド名の由来といったこぼれ話を紹介し、さまざまな視点から読者に楽しんでもらえるように工夫した。

 はやり廃りの著しいファッション界の流れに合わせるため、各メーカーは常に試行錯誤を続けてきた。広島県福山市のメーカーは男女共用が基本となっていた中、いち早く女性専用のジーンズの製造に挑んだ。色落ちの加工をする際、環境に配慮して化学薬品を含む廃液をほとんど出さない技術を開発する業者など、さまざまな試みを紹介した。

 重成記者は「繊維は斜陽産業と思われがちだが、常に時代に合わせた技術革新に取り組んでいる。その熱意が伝わってほしいとの思いで取材してきた」と振り返る。(梛)

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