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2016年 5月31日
「無意識の偏見」を問題提起
長崎「多様性とは―障害者になった彼の視点」
長崎県内の大学に通う堤龍平さんは、小学生のころに発症した「コブ症候群」の影響で首から下が動かない。中学進学時に特別支援学校に進んだ。自身が無意識に抱いていた障害者に対する偏見から、強烈な劣等感を感じたという。今は友人や後輩に囲まれ充実した大学生活を送る堤さんと、家族・友人に取材を重ね、4月26日からローカル面で計4回連載した。
交通事故や病気などで、誰もが障害を抱える可能性がある。いつ自分が当事者になるか分からない。それでも、障害者に対する偏見や固定観念があるのではないか。
佐世保支社の戸羽信介記者は、社会にある「無意識の偏見」について問題提起したかったという。「突然障害を抱えることになった人がどう受け入れたのか。その思いや葛藤を取り上げることで、考えるきっかけになれば」と狙いを話す。
戸羽記者が堤さんと出会ったのは昨年12月。市内の高校生に向けて話すのを聞いたのがきっかけだ。障害者や多様な性の在り方を受け入れ、皆が生きやすい環境を整えるには、まず知る必要がある。堤さんは、周りが変わればなくせる障害もあると訴えていた。戸羽記者は「人は皆違っていい、という言葉には重みがあった」と振り返る。
堤さんの両親は息子の障害に苦悩・葛藤した。戸羽記者は「取材しながら涙がこぼれそうになることもあった」。しかし、苦労した話だけではなく「本人や両親がどう試練を乗り越えたのかを取り上げたかった」と思いを語る。
誰もが堤さんのように障害を受け入れて前向きに生きていける訳ではない。「他の障害者のことも念頭に置きながら言葉を選ぶようにした」という。
連載後、読者から手紙が寄せられたり、市内の特別支援学校の関係者らが集まる場で連載が紹介されたりするなど、反響を呼んでいる。(愛)