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2017年 1月1日
地元の熱気と交流の機運追う
山口「12・15長門 日ロ首脳会談に向けて」
安倍晋三首相の地元、山口県長門市で日露首脳会談が開かれた。日本海に面した人口約3万5千人の町が首脳外交の舞台になるのは初めて。12月9日付から3回連載で地元の盛り上がりや国際交流活性化の機運の高まりを伝えた。報道部、長門支局、山口支社の記者が取材に当たった。
会談決定直後の9月28日には「歓迎 日露首脳会談」の横断幕が市役所に掲げられた。日露戦争の日本海海戦で市内の海岸に漂着したロシア軍兵士の遺体を葬った墓は「日露平和の象徴」として脚光を浴びる。山道が整備され、多くの人が訪れるようになった。地元の小学校では、墓の由来を通じ平和を学ぶ授業が行われた。ロシアの食文化に親しもうという市民グループも現れた。長門市のふるさと納税返礼品には「日ロ首脳会談応援セット」が加わった。
「首相に恥をかかせる訳にいかない」。地元の意気込みは日に日に高まった。しかし、長門支局の木島優輔記者は「人々が盛り上がり、おもてなしの準備に頑張る一方で、国内には北方領土問題や日本漁船への銃撃事件などでロシアに良い感情を持っていない人もいる」と複雑な思いを語る。
プーチン大統領の滞在は1泊2日の駆け足ながら、全国の警察官約4100人が警備に動員される。鉄道やバスの運休、道路の検問などで市民生活にも影響が出る。それでも地元では首脳外交の舞台と「長門を世界に発信する機会」を重ね合わせる。ロシア地方都市との姉妹都市協定締結や、県と連携して東京五輪・パラリンピックのキャンプ招致を進める動きもある。
連載を統括した石田晋作編集局次長兼報道部長は「首脳会談を機に芽生えた長門とロシアとの関係を、どのように将来の交流に育てていけるか。地元紙として今後も追っていきたい」と語った。(有)