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2017年 1月31日
風評被害乗り越え販路開拓
福島民報「超えていく ふくしま古里創生
東日本大震災と福島第一原発事故から間もなく6年。風評被害にさらされた農産物の売り上げ回復は容易ではない。元日付から17回の連載で、従来の枠組みにとらわれず販路を開拓する動きを追った。
「復興や地域創生の掛け声とは裏腹に、県内の停滞感や閉塞感は強まっている。今までと違う発想で現状の打開を目指す動きを発掘しようと考えた」。連載を統括した水口拓也報道部副部長は狙いを話す。
カタールの首都ドーハの高級スーパーには「スタンダードすしライス」として猪苗代町産の米「いなわしろ天のつぶ」が並ぶ。後発品種のため国内市場に割って入ることが難しく、風評被害が追い打ちをかけた。町役場や生産者は海外展開に活路を求める。和食ブームに沸く中東へ、昨年6月から本格的な輸出が始まった。消費者の心を捉え続けるため認定生産者制度を導入し、米粒の大きさも生産基準で定める。「世界一のすしライス」を目標に掲げる。
農業をカッコいい職業にしよう―。県内の若手生産者で作る一般社団法人クールアグリ(郡山市)は、会員が育てた農産物を共同受注し、独自の流通経路で届ける新事業に着手する。県南部を中心に全県への展開を目指す「中規模流通」だ。市場を通す従来の大規模流通と、生産者による直接販売の中間に位置づける。
原発事故後、車に野菜を積んで品質や作り手の思いを伝えながら売り歩くうち、地元の小売・飲食店から注文が入り始めた。その経験から、味や鮮度、安全への意識が高い消費者に集荷から2日以内で届ける。連載で関心を持った宿泊関係の組合から問い合わせもあったという。
今後は、地域の産業を担う人材の育成や高齢化などの課題を取り上げる予定。(有)