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2017年 2月7日
住民が語る海路避難の課題
佐賀「離島の備えは 考・玄海原発再稼働」
九州電力玄海原発の半径30キロ圏内には17の離島がある。原子力規制委員会は1月、玄海原発3、4号機が新規制基準に適合するとの結論を出した。
本格化する再稼働論議の中で焦点となるのが離島の避難計画だ。青木宏文報道部記者らが三つの島を取材。20日付から3回連載で、島民らの声を基に課題を浮き彫りにした。
原発の南西6キロの海に浮かぶ向島(むくしま)は人口約60人。唐津市の計画では、重大事故が起きれば島民は船で逃げる。避難態勢が整うまでは、放射能対策を施した屋内退避施設に集まって過ごす。
退避先に指定されているのは休校となった小学校の分校。ところが昨年末、分校は土砂災害の危険度が高い「特別警戒区域」にあたることが判明する。校舎裏手の急斜面が地震で崩れる可能性があった。代替となる頑丈な建物はない。
分校には非常食、防護服、簡易トイレなどが山積みされているものの、全容を把握している人はいない。隣接する診療所には甲状腺被ばくを軽減するための安定ヨウ素剤もある。しかし服用法は誰も知らない。
市の職員が常駐しておらず、備蓄についても島民に説明はなかったという。ヨウ素剤が必要な事態になれば、職員が説明しながら配る想定ながら、担当者が島に渡れるかは分からない。
「もう、島を売って金もろて、陸に上がって暮らした方がよか」。青木記者は島民の間で交わされているという冗談を紹介した。足りないのは行政のケアだけではない、と感じたからだ。「気持ちの面で備えができていない。半ば諦めている人もいる」と語る。連載では高齢化や後継者不足が避難計画の浸透に及ぼす影響についても指摘した。
再稼働問題を巡っては今後、地域経済への影響や避難計画を検証する連載を予定する。(酒)