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2017年 2月28日
救命率向上への模索を追う
伊勢「ドクターヘリ就航5年 三重の救急医療」
ドクターヘリは一刻を争う重症患者を高度な設備が整った病院に搬送する。入り組んだ海岸線、険しい山地がある三重県でも活躍する。しかし、ヘリだけで地域の救急医療が向上するわけではない。伊勢志摩総局の倉持亮記者が、就航5年の節目に救急医療の現状と課題を探った。2月1日から3回連載した。
「志摩市内の70代男性が胸の痛みを訴えている」。津市の三重大病院に、志摩市の志摩広域消防本部からヘリの出動要請が入った。県立志摩病院に飛ぶ。同病院で心電図やレントゲンから病名を急性心筋梗塞とほぼ確定し、伊勢市の伊勢赤十字病院に受け入れ準備を要請。搬送する機内で投薬治療を始めた。
ドクターヘリは三重大、伊勢赤十字の両病院を基地とする。100キロ離れた県南部地域へは出動から約30分で到着する。緊急搬送と機内での治療で、救命率を上げる努力が続く。
一方、熊野市消防本部管内では、隣接する和歌山県の新宮市立医療センターに救急車で搬送される重症患者も。救命率をさらに上げるには、どうすればよいのか。
救急車内で患者の心電図をとり病院にデータを伝送、医師が診断できれば、早く受け入れ態勢を整えられる。しかし伝送システムの導入は、費用の問題で進まない。そもそも地域により、心疾患の専門医がいない中核病院もある。救急車内で救命処置を行う救急救命士の育成も行われているものの、県の担当者は「全体として数が足りない」と話す。救急救命士の技量向上も課題だ。
連載はドクターヘリ導入の成果の検証に始まり、救急医療の現場に山積する課題を描き出す。解決には政治家の理解や医師会の協力も必要とする。「県の救急医療が乗り越えるべき課題が見えた」。倉持記者は振り返った。(有)