2017年 3月21日
患者とドナー家族の架け橋

福井「あなたの目に 県アイバンク 創立30年」

  「めをくれてありがとう。しゅじゅつで しろくなってためが くろいきれいなめになりました」。黒目が白く濁る病気だった女の子は移植手術後、角膜提供者(ドナー)の家族にこんな手紙を送った。

 福井県は人口当たりの献眼者数が全国2位を誇る(2015年度)。移植を待つ人との架け橋となる県アイバンクは今年、創立30年を迎えた。ドナーは比較的見つかりやすいという。担当した社会部の堀英彦記者は「移植コーディネーターが熱心なことに尽きる」と理由を話す。3月7日から県内総合面の連載3回で、移植コーディネーターの活動に密着した。

 連載には毎回、コーディネーターの平澤ゆみ子さん(44)が登場する。「ドナーと移植患者の仲介だけでなく、残された家族に寄り添うことも重要」と語る。

 2015年に大動脈瘤破裂で亡くなった50歳の男性は、臓器提供を希望する意思表明を免許証に記していた。平澤さんが家族に献眼の意思を確認。眼科医による眼球摘出から義眼装着を経て、平澤さんがエンゼルメーク(死化粧)を施す。「主人の思いを何とかかなえてあげたかった」という夫人の言葉が紹介される。

 特別養護老人ホームで昨年亡くなった82歳の女性は認知症で意思表示ができず、家族が献眼を決めた。この女性の角膜は福井県と千葉県の人に移植された。その報告を家族にするのも平澤さんの役目だ。

 平澤さんは20年前、姉=当時29歳=を病気で亡くした。無力感に陥り看護師を辞めようと思っていたとき「命をつなぐ医療」に出合った。「姉の角膜を提供できていれば自分も少しは救われたのでは」という思いがあるという。

 連載後、「ドナー登録したい」という声がアイバンクに寄せられていると堀記者は語った。(O)

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