2017年 4月4日
多文化共生を言葉から考える

西日本「やさしい日本語」

 ポイントは五つ。方言を避ける。敬語を使わない。語彙(ごい)を簡単に。短くシンプルな文で。ゆっくり、はっきり、最後まで。

 「やさしい日本語」は弘前大の佐藤和之教授(社会言語学)らが提唱した。きっかけは1995年の阪神・淡路大震災。日本語も英語も分からず、必要な情報を得られなかった外国人被災者への支援策として生まれた。専門家へのインタビューと外国人に人気の福岡県太宰府市の取材を通じ、観光客のおもてなしに生かせるやさしい日本語を「もっと九州」面で特集した。3月9、10日付朝刊の上下連載。

 九州を訪れる外国人観光客は2016年、370万人を超えた。同県柳川市は台湾から訪れる人をやさしい日本語で接客しようと取り組む。

 連載を担当した四十物恵妙記者は元日本語教師でもある。最も難しいのが敬語で、かつて教えたロシア人学生は「日本で嫌いなのは納豆と敬語です」と話していたという。

 大宰府の武将グッズ販売店の百武和則店長は英語で接客しつつ、日本語で話しかけられれば日本語で返す。「『ありがとうございます』より『ありがとう』の方が分かってくれますよ」。現場の経験からやさしい日本語を実践する。

 スマートフォンが普及し、人に聞かなくても目的地にたどり着けるようになった。検索した商品写真を店員に見せれば「これが欲しい」と伝わる。それでも「話したい、コミュニケーションを取りたいと考える観光客はいる。相手の言葉を学ぶのもいいが、すぐにはマスターできない。日本語で歩み寄る選択肢も大事だ」と四十物記者は話す。

 観光地に限らず、職場や地域でも外国人と接する機会は増えるとみられる。やさしい日本語は「多文化共生を支える共通言語として必要とされるのではないか」と語った。(酒)

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