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2017年 5月9日
無理解と偏見の人生描く
山梨日日「山梨発LGBTを考える」
「自分の生き方を、本当に受け入れてもらえる日は来るのだろうか」。ヒロムさん(41)=仮名=は女性として生まれたことへの違和感を抱えて生きてきた。成人を迎えるとき、家族に打ち明けたが、理解してもらえなかった。悩みながら男性の装いで生活する。70代を迎える母親は今でも「私にとっては娘」と知人に話しているらしい―。
高校教科書への性的少数者(LGBT)の記載、同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」を自治体が定めるなど、LGBTへの理解は広がってきている。しかし、無理解や偏見も根強い。上司や同僚が同性愛者や両性愛者だったら「嫌だ」と感じる人が3割以上に達したとの調査もある。家庭や職場など日々の暮らしで生きにくさを抱く当事者の思いを4月9日付から5回連載で伝えた。
LGBTは特別な存在ではなく、どう向き合うかを考える契機にしてもらうことが企画の狙い。地域では今もLGBTが人々の関心の外にあるのではないかとの問題意識が背景にある。
ホルモン治療を受け男性として生きるカエデさん(29)=同=は「排除されるのでは」との恐怖から職場に過去を打ち明けられずにいる。取材した企画報道グループの戸松優記者は「当たり前の存在として知ってほしい」とのカエデさんの言葉が印象に残っていると話す。「大多数の中で『普通に生きている』人として、当事者の人生を淡々と伝えようと努めた」
掲載後「地域の身近なところに当事者がいることに驚いた」などの反響のほか、自身もLGBTだという読者から「励まされた」との声が届いた。取材班のキャップを務めた同グループの前島文彦記者は「当事者が声を上げたり、打ち明けやすい環境を作る一助になれば」と期待を込めた。(斎)