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2017年 6月6日
揺らぐ市民の生活を直視
函館「人口減と道南の未来 第1部 函館市の苦悩」
北海道新幹線の開業効果で、2016年度に函館市を訪れた観光客は約560万7千人に上る。一方、市の人口は今年4月時点で26万4050人。10年前の29万2139人から約3万人減った。急激な人口減少は、地域の活力低下、商店街の衰退、小中学校の統廃合など、市民生活に深刻な影響を及ぼす。
年間キャンペーンのテーマを話し合う中で、この問題が浮かび上がった。第1部は4月30日付から5回連載で記者7人が執筆。地域の現状を追うことから始めた。
取材に入ると、まず町内会を取り巻く様々な問題が眼前に。役員のなり手不足、固定化、高齢化は、清掃や雪かき、防犯・防災のための見回り、敬老会活動などを停滞させ、市民生活の足元を揺るがしている。連載を統括した山崎大和報道部副部長は「状況は想像をはるかに超えて切迫していた」と語る。
高丘町会は活動を維持するため、函館高専や函館短大の学生ボランティアの参加など、町内に集中する教育機関との連携を強める。それでも、若年層の町内会離れが進み、会費収入の減少に頭を悩ます。「魅力ある町内会づくりを進め、加入世帯を増やすしか生き残る道はない」と同町会の武下秀雄会長(76)。
大学や高専など高等教育機関で学んだ若者の札幌や首都圏への流出も深刻な問題だ。市は、公立はこだて未来大のAI研究や函館高専のものづくり技術をPRし、IT企業誘致による雇用創出に取り組むが、受け皿効果は限定的。「優秀な子どもを育てれば育てるほど、出ていって戻ってこない」。工藤寿樹市長は危機感を募らせる。
第1部では「現状を直視し真正面から書くことに徹した」と山崎氏は語る。地域再生への取り組みや人口減に対応する先進地の試みなど、年内に4部まで予定している。(有)