2017年 7月4日
絹産業は富岡だけじゃない

上毛「未来を紡ぐ 世界遺産登録3年」

 富岡製糸場(群馬県富岡市)の2016年度の来場者数は80万人だった。世界文化遺産に登録された14年度は133万人、15年度は114万人。3年目で100万人を割り込んだ。

 登録後の「お祭り騒ぎ」が終わり、遺産の価値を後世に伝える活動がこれから本番を迎える。文化生活部、富岡、藤岡、伊勢崎の各支局の記者計6人が保存や伝承に向けた動きと課題を取材した。6月19日付から10回連載。

 地域にとり世界遺産は大きな観光資源だ。一方、未来に残すため最善の保存策を講じる義務も生じる。財政難による妥協は許されない。製糸場の整備費は10年で100億円と見積もられた。富岡市は4分の1、年間約2億5千万円を負担する。「年間来場者数80万人」を維持できれば、見学料収入で大半を賄える見込みだという。

 世界遺産に登録されたのは「富岡製糸場と絹産業遺産群」。田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)を含め「4資産」と呼ばれる。

 これ以外にも、絹産業の関連文化財は県内各所に点在する。近代養蚕法を開発した田島弥平の旧宅周辺には、幕末から昭和初期に建てられた70軒以上の蚕種(蚕の卵)製造民家群がある。

 屋敷の維持に公共の支援はない。所有者の1人、田島亀夫さん(83)は往時の姿を残そうと1500万円を投じ母屋の屋根を葺(ふ)き替えた。しかし東日本大震災で被害を受け、一部を解体するか頭を悩ます。

 所有者の負担を軽減できなければ、こうした民間資産の多くが消滅しかねない。連載のキャップを務めた文化生活部の天笠美由紀記者は「4資産は絹にまつわるあらゆる文化財・遺産の代表。富岡製糸場に注目が集まりがちだが、絹産業の裾野は広い。それをどう伝えていくかは今後も課題としたい」と語った。(酒)

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