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2017年 8月22日
患者の声通じ意識変化促す
福島民友「健康長寿 福島の挑戦」
心筋梗塞による死亡率が男女ともに全国ワースト1位。脳梗塞は男性が7位、女性が5位―。厚生労働省が6月に発表した2015年の死因別死亡率に関する調査で、福島県民の健康指標は「最低レベル」という現実を突きつけられた。
10年の調査でも心筋梗塞による死亡率は全国1位だった。「東日本大震災、福島第一原発事故を受け、県民の健康意識が上がったと感じていただけに残念だった」と連載を担当する報道部の須田絢一記者は語る。
連載の目的は意識の変化を促すこと。7月20日付から始まった第1部「現実」(全6回)では、「サイレントキラー」(沈黙の殺人者)と呼ばれる高血圧の恐ろしさと予防の重要性を訴えた。4人の記者が担当した。
二本松市の男性(57)は14年10月、友人と訪れた福島市の体育館で顔に違和感を覚えた後、ろれつが回らなくなった。そのまま救急車で運ばれた。脳出血。「1人だったらどうなっていたか」。リハビリを経て、左半身にまひが残るものの約1年後に復職。
記事の中で男性は、当時の「油断」を悔いた。50歳近くになり収縮期血圧が180を上回ったにもかかわらず、処方された薬を「自分だけは大丈夫」と決めつけ1週間でやめていた。
須田氏は「実例を紹介することで危機意識を持ってほしい」と考えこの男性への取材を始めた。当初は「患者のつらい経験をだし(題材)にしているのでは」という後ろめたさも感じていた。しかし「『私のようにならないでほしい』との男性の思いに後押しされた」と話す。
今後は医師不足など医療体制の課題や、官民挙げての健康改善策などを取り上げる予定だ。連載のゴールは決めていない。「改善の効果は短期間では出てこない」(須田氏)からだ。(海)