2017年 9月5日
伝統工法に記者の仕事重ねる

下野「夏に挑む 若手記者体験ルポ」

 入社2年目の斉藤章人記者は今春、栃木支局配属となった。2014、16年に続き3回目となる体験取材記特集。斉藤記者は蔵の修繕に挑戦することにした。

 栃木市は蔵の街として知られる。中でも嘉右衛門(かうえもん)町地区は重要伝統的建造物群保存地区に指定され、市は保全と活用に力を入れる。

 赴任以来、趣ある街並みに心ひかれていた斉藤記者は、古い蔵が「どうやって守られているのか気になっていた」。伝統建築の修復や古民家再生を手掛ける工務店の代表・山本兵一さんに頼み8月1日、竹小舞(たけこまい)と呼ばれる土壁の下地作りを体験した。

 現場は江戸末期の安政年間に建てられた文庫蔵。作業では竹を格子状に組む。まず横竹に縦竹を等間隔で結ぶ。次に別の横竹を異なる結び方で縦竹に固定する。暑さと力の要る作業で汗が噴き出す。「結び方は単純だがやるとなると難しい」と実感を記した。

 竹小舞は土を塗れば見えなくなる。人の目に触れない繊細な作業の積み重ねは、自身の仕事に通じると斉藤記者は話す。「記事に表れない部分で、地域の人と関係を築くことも大切。小さな努力を重ねることで仕事は充実していくと感じた」

 7日付から全6回。取材には総支局長や先輩記者が同行し、汗を流す若手記者の姿をカメラに収めた。

 地域報道部の茂木信幸部長代理によると、写真掲載には記者の顔を地域の人たちに知ってもらう狙いがある。6人の記者には「指導者の話をよく聞き、感じたことを素直に書いてほしい」と伝えた。

 「あの記事読んだよ」。その一言から話題が広がり、相手との距離が縮まるかもしれない。恒例となった夏の連載には、先輩記者たちの心遣いとエールが詰まっている。若い記者が一日も早く地域に溶け込み、活躍できるように――。(酒)

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