2017年 9月19日
赤字鉄道の苦闘支える商店会

東奥「弘南鉄道 地域に根ざし90年」

 1927年に開業した弘南鉄道(青森県平川市)。弘南線、大鰐線の2路線を運営し、沿線に商店街や住宅街が作られるなど地域の発展に貢献してきた。一方、人口減や「鉄道離れ」に伴う経営難とも向き合う。開業90年の節目に歩みを振り返るとともに、鉄道を未来へつなげようと尽力する人々を追った。9月1日付から全6回。

 弘前市と大鰐町を結ぶ大鰐線は、52年に「弘前電気鉄道」として開通した。他社バスなどとの競合で経営が厳しくなる中、70年に弘南鉄道が運行を引き継いだ。赤字線の買収は、鉄道会社として「地域の発展を第一に考えての決断だった」と紹介。取材した黒石支局平川通信部の長内健記者は、同鉄道の「住民の交通手段を守る」使命感に打たれたと語る。

 しかし2013年、社長が大鰐線の廃止を表明。後に撤回したものの、厳しい経営が続く。背景には少子化による通学客の激減があった。長内記者は「列車に乗ったことがない子供がいる」との声まで耳にし、鉄道離れの深刻さに驚いたと振り返る。

 弘前市の西弘商店街維持振興会に加盟する18店は、昨年から月に3日間限定で、飲食代割引などのサービスを始めた。大鰐線・弘前学院大前駅の周辺に活気を取り戻すのが狙い。本間善幸・黒石支局長は「歴史だけでなく、鉄道を支えようとする人々に光を当てたかった」と話す。

 同会の会長が店長を務める焼き肉店でも、飲食費の2割分を食事券として進呈する。来客数は増えたものの「なかなか列車を使って来てくれない」。それでも「商店街は大鰐線とともに発展した」との意識から「支援を続ける思いに変わりはない」との決意を報じた。本間氏は「彼らに刺激を受け、読者が鉄道を利用するきっかけになってくれれば」と期待を込める。 (斎)

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