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2017年 12月12日
「混ぜ物なしの銘茶」守るには
静岡「再考 添加茶」
茶の生産で全国の4割、流通で6割を占める静岡県。農家の高齢化や問屋の後継者不足、何より消費の低迷で茶業は先細るも、着味や着色をした「添加茶」の製造や販売を原則禁じてきた。それが「茶の都」の伝統だった。
しかし今年7月、1956年制定の製茶指導取締条例を廃止するとの県の方針が明らかになる。花や果実の香りを付けるなど多彩な商品開発を制約しているというのが理由。ところが方針を決めたのは県と茶業界のごく一部と分かった。「仕組みを変える前に県民を巻き込み議論すべきではないか」(佐藤学編集局経済部長)。7月25日付から14回。9人で取材した。
第1章で条例廃止への賛否を紹介。以後テーマは「消費者の目線」「条例が果たしてきた役割」「条例見直しの論点」と多岐にわたる。取材先も消費者団体、条例を担当した元県職員に広がった。
県の意見募集の結果をみると約9割が廃止反対。一方「茶業界活性化につながる」と支持する声もあった。当初は「廃止などもってのほかとやや感情移入していた」佐藤氏も多様な意見に触れ「県民の議論を深めるための素材提供が第一」との考えに変わった。
山東茶業組合(掛川市東山農家16軒)など、肥料や品種改良の工夫で茶の天然のうま味を引き出してきた事例がある。一方、競争力の低い産地は安く簡単にうま味を付けられる添加物に頼ることも考えられる。条例廃止の前に振興策を考えるべきではないか。「混ぜ物なしの静岡茶という声価を保証する仕組みを残してほしい」と望む同組合の代表理事の声を伝えた。
議論の高まりを受け県は条例廃止を見送った。識者会議で条例の改廃や茶業振興策を検討する。佐藤氏は「今後は静岡茶の『再興』を検討する材料を示していきたい」。(工)