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2018年 2月6日
自ら売る生産者の奮闘に光
岩手日日「売る農業への挑戦 南部一郎生産10年」
マンゴー並みの甘さを持ち、鶴の首のように細長い形が特徴のカボチャ「南部一郎」。岩手県一関市の本寺地区で生産が始まり10年を迎えた。
骨寺村荘園カボチャ研究会の佐藤弘征会長は直接購入してくれる業者や団体との取引に活路を見いだす。需要に即した生産体制で売り上げは好調だ。1月8日付から3回連載で、売り上げを伸ばすため工夫を重ねる生産者の取り組みを伝えた。
販売が軌道に乗った頃、あるホテルから「大きい物は要らない」と思わぬ一言が届いた。理由は南部一郎の形状を生かし実を丸ごと使ったグラタンを作るためだという。大きさや糖度、見た目などの規格管理を徹底してきた佐藤会長は驚いたものの、料理人の創造力に感服し小ぶりの青果の出荷に応じた。
これを機に必要な物を必要な量だけ出荷する体制を整備した。取材した報道部の菅原親裕記者に「客先を絞ってこつこつと辛抱強く取り組むことが大事」と語った。南部一郎を扱う都内の業者から依頼を受け、一般の種苗店では手に入らない品種の大根も生産している。
菅原記者は「農業については門外漢だった」と明かす。詳しくないからこそ「農家や研究所で良い作物を作っても、売る努力はできているのだろうか」と疑問に感じていたという。
連載では「『自ら売る』という生産者の主体性に着眼した」と話す。農家の知人から販路拡大の知恵を尋ねられた経験を思い出し「情報を求めている人はいるはずだ」と取材を始めた。
骨寺村荘園カボチャ研究会は南部一郎の加工品販売にも力を注ぐ。ペーストは今年9月までに出荷する分の予約が800キロに達した。青果として販売予定だった分も使い対応するという。菅原記者は、加工品を製造する一関市や陸前高田市の企業にも取材の足を伸ばしていく。(海)