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2018年 2月20日
外国人実習生の思い伝える
茨城「異国の大地 茨城農業を支えて」
もし彼らがいなかったら? 「とっくに廃業していただろうね」。鉾田市のイチゴ農家・村田農園の代表、村田和寿さんの言葉だ。農業が盛んな茨城県東南部・鹿行(ろっこう)地域。3千人超の外国人実習生が生産を支える。
実習生は既に地域の一員だ。夕刻のスーパーマーケットには買い物に訪れた彼らの中国語、ベトナム語、インドネシア語が飛び交う。しかし「実習生がどんな思いで日本に来たか。ここでどう暮らしているか。われわれは何も知らなかった」。鉾田支局の大平賢二記者は話す。1月18日付から全10回。読者に実習生の姿を伝えることを主眼とした。大平氏ら4人が取材した。
村田農園に住み込み実習生活を送るグデ・アンドリプトラナさんは来日3年目。インドネシア国籍の24歳。「帰ったら土づくりから始めて、いいカカオを育てたいと思います」と取材に答えた。
グデさんは少数派だ。大平氏は「技能実習という本来の目的で来日した人を探すのは難しかった」と話す。滞在中にできるだけ稼ぎたいというのが多くの実習生の本音だった。
働きたい人がいて、深刻な人手不足に悩む農家がいる。しかし移民という「正門」は閉じたまま。外国人は実習制度という「くぐり戸」から入らざるを得ない―。
ルポを通じ、制度が現状に見合っていない実態も伝えた。大平氏は「この地域でも人口減少や後継者不足は進んでいた。実質的な労働力としての実習生がいたから目立たなかったにすぎない」と指摘する。
農家に限らず、さまざまな産業が人口減少や国内市場の縮小に直面する。海外進出をうかがう県内企業は、現地とのパイプ役を担う「高度人材」と呼ばれる外国人の確保に動き始めているという。大平氏が次に見据える取材テーマだ。(酒)