2018年 4月10日
児童の安全 行政の自覚促す

沖タイ「放課後のいま」

 子供の行き場がない。

 春に小学1、3年になる姉妹が昨年11月、学童クラブの選考に漏れた。在籍中の長女も4月から通えない。夫婦共働きでともに正社員。なぜ入れないのか。母親(36)は役場に窮状を訴えた。しかし行政は待機児童数さえ把握しておらず、選考もクラブ任せ。返答はなく、疑問は晴れなかった。

 公的関与が足りず、親に負担がのしかかる。この現状を学芸部くらし班の高崎園子記者(現南部報道部)、座安あきの記者(現経営企画部)が取材した。2月23日付から全3部、計16回。

 母親が入所を申し込んだクラブは民設民営。全国では2割、沖縄では9割を占める。アパートなどを転用した施設が多い。家賃のほか、学校から離れたクラブでは送迎費もかさむ。これらは利用料に転嫁される。県内の平均月額は9199円だ。

 全国的には、高度成長期に官民双方で学童クラブの整備が進んだ。しかし米軍統治下にあった沖縄は、根拠規定である児童福祉法の適用外。このため「民間の動きが先行し、既成事実化した。行政の当事者意識が薄い」(高崎氏)。役場が待機児童数のデータを取っていないのも、入所申請窓口が一元化されていないのもこのためだ。

 2015年度からの新制度で、学童クラブは市町村が運営主体であることが明確化された。国による送迎費などの補助メニューも整った。

 連載に合わせ実施した保護者アンケートでは、学校の敷地内にあるクラブに通わせたいとの回答が83.8%に上った。しかし沖縄の学校内施設は11%で全国最下位。自治体や教育委員会が動いてこなかったことの証左だ。「これは何十年も前からある古くて新しい問題。行政側には、子どもの安全・安心に対する公的責任の自覚を促したい」。高崎記者は強調した。(酒)

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