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2018年 5月8日
日系ブラジル人家族に密着
信濃毎日「ふるさとをここに 第3部 ニッポンで見る夢は 並柳団地編」
長野県松本市の並柳団地には約120人の外国籍住民が暮らす。中国、ブラジル、フィリピンなど、その数は団地内の15%。ここに日本国籍取得者は含まれていない。
「稼ぎのいい日本」にひかれて海を渡ってきたものの、置かれる立場は派遣労働者。企業にとっては雇用の調整弁に過ぎない。彼らは「地域や日本社会をどう見ているのか」。3月27日付から8回にわたり、二組の日系ブラジル人一家の暮らしに迫った。
松本報道部の佐藤大輔記者は昨年10月ごろから、子ども食堂「なみカフェ」を手伝いながら「地域の輪郭を捉えてきた」。町会長に取材を申し込んだ際「いきなり来てコミュニティーを壊してほしくない。まずは地域をよく見てからにしてほしい」と言われたからだ。
「信頼関係を築かないと取材に入れない」。上司の承諾を得て、週1回、宿題や遊びの手伝いに食堂に通った。子供には「先生」と呼ばれたが、親には記者であることを明かし、取材の礎にした。川野洋明君に出会ったのもここだ。
洋明君の父・洋一さんはブラジルで生まれ育った。1991年に来日。2011年から産業用機械メーカーの工場で働く。残業や土曜出勤もいとわないが、時給制でボーナスもない。「私は『出稼ぎ』だから」。
彼らは待遇改善よりも働く場所を求めていると佐藤記者。「派遣労働を悲観的に見るのは先入観だった。家族を養うために、超過勤務手当をあてにする考え方もあると気付かされた」と話す。
それでも同じく日系2世の妻と2人の子供は日本国籍を取った。日本社会でいずれ直面するハードルを下げるためだという。「子供たちには、同じようになってほしくない」。切実な親心も佐藤記者に語った。(海)