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2018年 5月29日
仕事から暮らしの問題探る
日本海「働く とっとりの現場から」
「冬場でも収入が得られる」。4年前に横浜市から鳥取県東南部の智頭町に移住した前田賢太郎さん(42)は取材に安堵(あんど)の表情を浮かべた。トマトやナスの栽培を手掛けるが、1メートルを超す積雪に覆われる冬は何もできない。飲食店のアルバイトを掛け持ちしたが農作業との両立は難しかった。
新年に始めた連載の第2部。「広がる新しい働き方」をテーマに4月18日付から全5回。農林水産業や経済を担当する真田透記者ら5人が担当した。
前田さんが夫婦で登録する「スキマワーク」は今年2月に誕生した。オフィスは廃校になった小学校の教室。人手不足の都会から会計事務を請け負う。パソコンや空調は町が整備した。
農林業が主体の地域なだけに、冬は町外で仕事を探す住民が少なくなかった。前田さんは冬に1日3~4時間、ここで働く。農繁期でも雨で作業ができない日などは足を運ぶつもりだという。
病気を抱えながら働き続ける人も追った。
鳥取市の野上貴史さん(41)は39歳の時に大腸がんが見つかった。2週間に1度、病院で抗がん剤の投与を受ける。受診日から3日間は副作用で激しい吐き気やだるさにさいなまれる。
野上さんは市内の医療機関に勤める。治療のある週は月~水曜に勤務し、木曜に通院。金~日曜は自宅で療養する。「妻と小学生の2人の子どもの生活のためにも、治療するからといって仕事を辞める選択肢はなかった」と取材に語った。職場の理解が治療と仕事の両立を支える。
真田記者は「仕事は生活の礎。『働く』というテーマを通じて、ライフスタイルに関わるさまざまな問題が見えてくる」と話す。第3部の主題は「地域で働く」。県内の大学に通う学生や、地元の若手社会人らを取材する予定だという。(酒)