2018年 8月7日
文化的価値を伝えるには

山梨日日「富士山世界遺産登録5年」

 2017年に山梨県内の富士山麓5市町村を訪れた観光客は1314万2千人。世界文化遺産登録前年の12年と比べ3割増えた。県内に宿泊した外国人も延べ153万人と約4倍に増えた。

 一方、信仰や芸術に関する発信、登山者の安全確保などの課題も抱える。連載デスクの小林義徳報道部副部長は「富士山を目指す人が増える中、文化的価値に触れる機会をどう作るかに苦心している」と話す。6月17日付から5回で、地元の人々が課題とどう向き合っているかに迫った。県政担当記者ら4人が取材した。

 文化発信の拠点・山梨県立富士山世界遺産センター。展示が並ぶ有料区の17年度の来場者数は、売店などの無料区の約5分の1だった。「世界遺産の価値を伝え、広める環境は十分整っている」のに「芸術や信仰への関心は高くないようだ」。ボランティアガイドの平山基さんの声。

 旅行会社は、噴火でできた溶岩樹型や本栖湖畔などをガイドとともに巡るツアーも用意する。世界遺産に詳しい稲葉信子筑波大院教授は、取材に「文化的価値を知ってもらうために山麓も訪れてほしい」と答えた。

 山麓では景観改善の動きが進む。県などの助成金を使い、4年間で85の看板が色や大きさを変えたという。構成資産の忍野八海に近い土産店は2年前、明るい緑色のひさしや外壁を焦げ茶色に改装した。同店の小沢理恵さんは「周辺の雰囲気作りに協力したかった」と記者に話した。

 小林氏は富士吉田総支社にいた約8年前、地元の事業者が世界遺産登録について「営業活動が制限されるのではないか」と心配する声を聞いたという。現在の動きを「世界遺産と共存しようとする意識が根付き始めた」と感じている。文化的価値をどう発信するか。取材で大切にしたい視点だと語った。(海)

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