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2018年 9月18日
反核運動継承の苦悩追う
佐賀「届け 平和のメッセージ 高校生大使と佐賀」
「知ること、そして行動に移すことが大切」。吉田澪(みを)さんは大学3年になった今も、小中学校を訪れ若者が平和活動に参加することの重要性を訴え続ける。2012年、佐賀県の初代高校生平和大使に選ばれた。1998年に始まった平和大使の活動。20人程度が毎夏、スイスの国連欧州本部を訪れ各地で集めた反核署名を届ける。
佐賀新聞社は12年、連載で吉田さんを追った。「まだ6年しかたっていない」と思っていた報道部の江島貴之記者。しかし今年7代目大使に選ばれた北村菜々さんが、小学生の時に吉田さんの講演を聞き活動に関心を持ったと知る。新しい世代への継承が進んだことを伝えたいと考えた。8月6日付から全5回。
人通りまばらな西松浦郡有田町で署名を呼び掛ける6代目大使・藤田裕佳さんにも取材した。署名を求めた相手から「核兵器は必要だ」と主張されるなど、さまざまな立場や考えを肌で感じ、悩みながら活動する姿を伝えた。
核兵器を巡る北朝鮮情勢が揺れるさなかでも、署名の数は変わらなかったという。「本当はみんな無関心なんじゃないか」。藤田さんがそんな疑問を抱きながら署名活動に立っていることを知った。「記者である自分にも返ってくる問いだった」
初代大使・吉田さんは「『同じ若者』としての訴えが説得力を持つのは、大学生までだと感じる」と語った。21歳の若者が、同世代への伝え方を変えなければならないと考えていた。江島氏の胸にも、新聞が若者に届かなくなっていることへの危機感がよぎる。
被爆者の生の声を聞くことが難しくなる中、平和活動の意義を若者にどう伝えるか。「若者を主役に据えるのは一つの手段」だが、全てではない。大使たちと同様、模索を続ける。(斎)