2018年 10月30日
激務の救命現場への処方箋

 西日本「どうする? 医師の働き方」

 九州のある救命救急センターで働く女性医師の7月の休日はゼロだった。就労3年目、シフト上は「午後5時30分退勤」の日も夜9時まで病院にいる。時間外労働がかさむと注意されるため、残業として報告していない。「正直に報告したら、自分の首を絞めることになる」

 西日本は7月、九州の35の中核病院を対象に、医師の働き方に関する調査を実施した。労働時間が規制されれば従来と同じ医療を提供できなくなるといった懸念など、悲痛な訴えが寄せられた。これを受け、救命救急センターの当直医たちに密着。彼らのサービス残業の実態に迫った。

 企画を構成した井上真由美・社会部編集委員は「解決策への『処方箋』を提示したかった」と説明する。医師の3交代制や、複数の医師で患者を受け持つ「チーム医療」を取り入れた市立病院の小児病棟で、人によっては勤務時間が前年度と比べ2、3割減ったと紹介した。

 知恵を絞れば医師の働き方も変えられる。そう実感した井上氏だが、医療技術の向上や医師の自己研さんは人命と密接に関わる。単に効率化すればよいとは言えず「バランスが難しい」。それはそのまま「新聞記者の仕事にも通じる問題だ」と感じた。

 8月、東京医科大の入試で、男子を優遇する得点操作が発覚した。取材班は8月27日付と9月3日付の2回で終了予定だった連載の3回目を企画。女性医師の働き方をテーマに、息子2人を育てながら長崎大病院に勤める外科医・崎村千香さんを追った。

 昼夜問わず急患に対応する激務だが、職場や家族の協力を得て歩む姿を伝えた。「女には無理な仕事だろう」という差別に対し井上氏は「怒るだけでなく、工夫して実際に働けている人がいることを示さなければ」と考えたという。(斎)

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