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2018年 11月6日
規制強化が生む元組員の苦境
神戸「ゆがむ境界 現代裏社会事情」
大阪拘置所の面会室。組関係者から高齢者宅の強盗を強要された20代の暴力団員がつぶやく。「悪さはしても弱者を食い物にしないのが『任侠道』と思っていたが......。普通の仕事がうらやましいです」
指定暴力団の六代目山口組、神戸山口組、任侠山口組が本部を構える兵庫県。法律、条例による規制強化で社会の裏に潜りつつある暴力団や犯罪集団と、脱退した元組員の苦境に迫った。9月16日付から全9回。
暴力団は詐欺や暴力事件で、いつ市民に牙をむくか分からない存在だ。一方、阪神・淡路大震災時に炊き出しをしたり、ハロウィーンでお菓子を配ったりと地域に溶け込んでいる側面もある。締め付けを強める警察側から見た姿だけでなく「実態を多面的に描き、誰もが無関係ではないことを伝えたかった」(黒田勝俊報道部事件デスク)。
播磨地域の産業廃棄物処理会社に勤める男性は、働きが評価され役員になった。直後、県から会社の事業許可が取り消された。暴力団離脱後5年未満の元組員が役員を務める会社には事業を認めないからだ。
男性は10年前に暴力団との関係を絶ったが、破門状など明確な証明がない限り「偽装離脱」の疑いがつきまとう。「離脱者に風当たりが強いままでは、再び裏社会に戻ってしまう」との識者の声も伝えた。
警察庁の調べでは、2017年の暴力団構成員の数は1万6800人。10年で6割近く減った。一方、「半グレ」と呼ばれる組織犯罪集団が増えている。高齢者などを狙った振り込め詐欺などを繰り返す。明確な拠点がなく、警察は実態把握に苦慮する。
締め付けるだけでいいのか、と葛藤(かっとう)する現場の警察官らから「よく書いてくれた」との声が届いたという。(路)