2018年 11月27日
障害児の居場所に迫る危機

沖タイ「ゆらぐ放課後」

 障害のある子供たちの放課後や夏休みの居場所を提供する「放課後等デイサービス」制度が揺れている。4月の改正で、子供の障害の程度に応じ報酬が支払われる仕組みに変わった。悪質な事業所を排除する目的もあるが、乏しい資金の中で懸命に運営してきた事業所の撤退、縮小も続く。「障害児通園事業」に源流を持つ放課後デイ制度の改正に潜む課題を追った。11月7日付から全3回。

 編集局特別報道チームの新崎哲史記者ら2人が取材した。きっかけは新崎記者が障害者の就労を応援する勉強会に参加したことだった。放課後、子供を送迎するデイサービスの車が列を成すものの、その実態を知る人は少ない。「制度への理解を促進し、課題解決につなげたい」

 まずは改正が事業所にどのような影響を及ぼしているかを示したかった。障害児の学校以外での活動を推進する「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会(全国放課後連)」の山本和順理事は言う。「参入の敷居は低くしておいて、数が増えたら規制を強める国の方針で多くの事業者が苦しむ」。約500万円あった利益が100万~150万円程度まで落ち込んだ事業所もあるという。

 連載を終えた2日後に全国放課後連が沖縄県で初めて開いた研修会は今回の企画で興味を持った参加者も多くほぼ満席。加盟者も大幅に増えたという。新崎記者は「放課後デイをより良い制度にしようと活動する全国放課後連の手助けができたと思うとうれしい」と述べた。

 しかし、入所者増加の背景に横たわる貧困や障害児を持つシングルマザーの現実など、書き切れなかったことも多いと振り返る。「障害の有無にかかわらず子供の成長は大事な財産。今回の取材で得た保護者や事業所とのつながりを元に、見守りながら取材を続ける」と話した。 (黒)

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