2019年 2月5日
統合の歴史といまを現地取材

高知「EUきしみの影絵  欧州視察メモから」

 岡村啓太郎論説委員は昨年11月、ベルギー北西部のイーペル市にいた。第1次世界大戦でドイツ軍と連合国軍が3度にわたり激突した地。ドイツ軍が史上初めて化学兵器を使い、戦場は凄惨(せいさん)を極めたと伝わる。

 領土争いと戦争の歴史から学び、自由と和平を掲げ生まれた欧州連合(EU)。しかし移民排斥の動きや大衆迎合主義の台頭などで土台が揺らぐ。共同加盟社論説研究会の視察に参加し、現地で感じた変化を伝えた。12月25日付から朝刊で全4回。

 第1次大戦史を伝えるイン・フランダース・フィールド博物館では、レーベン大のシュミット准教授に取材した。今の右傾化は、第1次から第2次大戦に至る「戦間期」と重なるという。シュミット氏の「なぜ失敗したのか。研究を深めたい」との言葉を伝えた。

 一行は現地ガイドの計らいで、毒ガスが使われた現場も訪れた。「欧州には継承してきた記憶や歴史の教訓がある。しかしそれを政治の中で実現する難しさを感じた」と岡村氏は話す。

 日本とEUの経済連携協定(EPA)が2月1日に発効した。互いに輸入品への関税を段階的に低減・撤廃する。日本でも人気が高い欧州産チーズやワインが安く手に入るようになる。

 半面、国内の農畜産業にとっては打撃となる。EU側は内への影響をどうみているのか。通商担当閣僚に当たるマルムストローム欧州委員の答えは「EU内の企業に懸念はないと思う。十分な準備をする」。自由貿易圏の誕生をあくまで前向きに捉えていた。

 現地では、リンゴなどの果物のおいしさに驚いたという。岡村氏は「手ごわい競争相手」との印象を強くした。「いいものを持っていけば売れる訳ではない。欧州の人が何を求め、好むのか分析しなければ勝負できない」       (酒)

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