2019年 3月5日
研究資金調達の現状追う

茨城「科学技術立県はいま」

 2016年の日本の研究開発費は18兆4千億円(文部科学省調べ)。米国、中国に次ぐ規模だ。茨城県は国の研究機関や大学が集まる筑波研究学園都市を擁し、日本の科学の進歩を支えてきた。

 しかし国の科学研究費助成予算は約2300億円で横ばいが続く。10万件超の応募のうち17年度の採択率は25%。国立大の運営費交付金も年1%ずつ減っている。

 報道部の戸島大樹記者は現状を「科学技術の危機」と捉える。「大学の業務や外部資金の獲得に時間を取られ、研究者が疲弊している」。1月20日付から13回の連載で、研究者の窮状や資金調達の現状に迫った。ベンチャー企業を起こし金融機関の融資を得たり、クラウドファンディングを活用したりする例を取り上げた。

 大学も対策を講じる。茨城大は14年度から、研究者を補助する専門職員を配し、教員同士の連携や共同研究を促す。大学全体で科研費の採択率を上げるため、博士号を持つ専門職員が300件近い申請書を確認する。筑波大も同様の体制を敷いている。

 企業と手を組む「産学連携」も有効策とされる。中村彰宏氏は茨城大准教授と油脂大手企業の主席研究員の二つの肩書きを持つ。月・火曜は企業の研究拠点、木・金曜は大学に出勤する。給与は両者で折半。大学は人件費を抑制できる。

 企業側も研究者の専門知識を商品開発に生かせる利点がある。社内情報にある程度アクセスでき、研究のノウハウを企業に還元することは「研究者として幅が広がる」。中村氏は記者に語った。

 大学の取材はこれまで研究成果の発表など「来た球を打つことが多かった」と戸島記者。経営戦略や教授の奮闘には目が向かなかったという。「取材で得たつながりを生かし、大学の変わろうとしている部分を継続して取材したい」(海)

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