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2020年 7月28日
住民目線で追う政府の変節
秋田魁「〈盾は何を守るのか〉イージス・アショアを問う 第9部・計画撤回」
河野太郎防衛相は6月15日、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を表明した。配備候補地の一つ、むつみ演習場(山口県萩市)で、ミサイルを打ち上げた際に切り離す推進装置(ブースター)を海などの安全な場所に確実に落とすことができないことが分かった――というのがその理由だ。
山口県とともに候補地に挙がっていた秋田県は防衛省の変節に振り回されてきた。急転直下の計画停止の背景を探りながら、これまでの政府のずさんな対応を振り返る。6月17日付から全3回。
社会地域報道部の長田雅巳記者は、2年前の住民説明会でブースター落下の危険性についてただした秋田市の吉田幸雄さんを訪ねた。吉田さんは海側から強く吹き付ける季節風の影響を懸念していたが、防衛省職員は「地上に影響はない」と主張し続けた。吉田さんは当時を振り返り「今までの説明はなんだったのか」と不満を募らせた。
配備候補地・新屋演習場(秋田市)は1㌔圏内に1万3千人が暮らす住宅地に隣接している。ブースターの軌道がそれ、住宅地に落ちた場合の影響は深刻だ。社会地域報道部の石塚健悟記者はかつて、イージス・アショアが世界で唯一実戦稼働しているルーマニアのデベセル基地を訪ねたことがある。「最も確実な安全策は基地の周りに住宅を造らないことだ」との司令官の言葉を記事で伝えていた。
計画停止について「さまざまな問題が出て計画を進められなくなったのではないか」(萩市住民代表・森山雅昭さん)との声も上がる。配備計画の撤回でこの問題が「終わったわけではない」(長田記者)。なぜ秋田が候補地に選ばれたのか。同様の問題を繰り返させないよう、計画が頓挫するまでの経緯を追い続ける。(浅)