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2021年 4月20日
普段使いの防災用品広がる
神奈川新聞「防災市場の今 3・11から10年」
水で戻せる五目ご飯、缶詰のケーキ、長持ちするクッキー。非常食は東日本大震災以降、開発が進み種類が増えた。市場規模は2018年度の推計で178億6400万円(矢野経済研究所調べ)。24年度にはその1.5倍超になるとみられている。
震災後10年を機に、経済部の細谷康介記者が防災用品を扱う企業を取材。商品開発や情報発信の工夫を紹介した。3月11日付から全3回。
尾西食品(東京都港区)は20年12月にウェブサイトを刷新した。水で戻すチキンライスで作る「トマトリゾット」など、普段の食事に転用できるメニューを紹介している。製品を身近に感じてもらうことと、定期的な買い替えを促す狙いがある。
防災用品全体の市場規模を見定めるのは難しい。必要なものは人によって違うからだ。細谷記者は「避難生活に役立つのであれば、カードゲームや化粧落としなども防災用品になり得る」と語る。
日常で使う製品との境目もなくなりつつある。
防災用品を扱うセイエンタプライズ(東京都千代田区)は20年、高機能自転車をメーカーと共同開発した。特殊なチューブが入った車輪はパンクの心配がない。電動アシストのバッテリーを取り外せば、携帯電話を充電できる。
自転車は通勤、通学での利用を想定する。日頃から使える仕様にすることで、購買を促す試みが広がっていることを伝えた。
防災用品は大規模災害が起きると売れ行きが伸びるものの、需要の浮き沈みが激しい。創意工夫の背景にある各社共通の課題は「平時は注目を集める機会がない」(細谷記者)ことだった。
細谷記者は昨年秋まで広告部に在籍。災害関連の広告企画を手掛けた経験も生かし、企業取材を進めたという。(酒)