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2021年 7月27日
貧困家庭支える学びやの実情
埼玉「アスポートの明日 困窮世帯学習支援10年 第1部」
生活に苦しむ世帯の子供の学習を支援しようと全国に先立ち埼玉県が2010年に始めた「アスポート事業」。県や各市が社団法人やNPO、大手学習塾に学習教室の運営を委託。元教員らが無料で勉強を教える。19年度は173教室に2416人の中高生が参加した。
ふるさと報道部の保坂直人記者は昨年秋、学習支援のボランティアに登録。仕事の合間を縫って教室に通い、支援員から実情を聞き取った。事業の現状と課題を第1部として1日付から5回にまとめた。
学習教室には生活保護世帯やひとり親の子供、不登校の子供も少なくない。不登校だった中学時代に学習教室に通っていた男性(21)は「心の支えだった」と話した。2駅分の距離を自転車で30分かけて通っていた。
支援員は家庭訪問を重ねて不登校の子供の家庭環境を把握したり、高校受験の願書提出を手伝ったりすることも。支援団体の前代表は連載で、光が当たりにくかった貧困世帯の子供に手を差し伸べられるようになったと語っている。
記事には教室に通う子供や母親、支援員の実名を載せなかった。生活困窮世帯を対象とした事業の性質を踏まえ、個人の特定を避けるためだという。
教室の場所は公にされていない。保坂記者は進学の話題や写真に写る服装、壁面の柄一つで本人や住む地域が特定されかねないと支援員から指摘を受けた。「事業の課題を浮かび上がらせる上で、子供の実態を直接的に描く必要はない」と考えたと振り返る。
10年以上続く事業には課題も指摘される。例えば、自治体と事業者との委託契約は年度単位の場合が多く、教室運営や支援員の雇用は安定性を欠く。家庭訪問を重視しない自治体もある。保坂記者は「今後も事業の課題を具体的に掘り下げたい」と述べた。(海)