2021年 11月9日
価値観多様化 商機の背景に

神奈川「空き家ビジネス 広がる可能性」

 約5千冊の本や雑誌が置かれた「本と屯(たむろ)」(神奈川県三浦市)。出版社の代表社員・三根真吾さんが2017年、空き家状態だった築90年以上の物件を「蔵書室」として開設した。訪れた人が本を無料で読めるようにしている。三根さんらは蔵書室開設の翌年、合同会社を設立した。空き家を活用して事業を起こしたい人に向けた物件探しの手伝いなどに取り組んでいる。

 総務省による2018年の調査では、神奈川県内の空き家は48万戸を超えた。総住宅数の1割に上る。中でも、賃貸や売却向けなどを除いた未流通の空き家が増えている。経済部の徳増瑛子記者が、こうした物件の情報発信や貸し出しなどに取り組む地元企業を取材。10月15日付朝刊から全2回で、現状や今後の展望を探った。

 空間デザインを手掛ける横浜市の企業「YADOKARI」などは、不動産会社が取り扱わない空き家を紹介するウェブサイトを運営する。売り手と買い手を結び付けることを目的に、情報を無料で載せている。買い手は20~40代が中心だという。

 徳増氏は、従来敬遠されがちだった空き家を商機と捉える企業が出始めた背景に「消費者の価値観の多様化」があると記事で指摘した。その上で若い世代は「無駄使いせず、物を大切にする」との意識が教育などで根付いていると説明する。こうした層が家を売買するようになった点が大きいとみている。

 空き家活用の需要は増えているものの、事業としては赤字の企業がほとんどだと徳増氏。どのように収益化するかが今後の課題だと指摘する。都内企業に勤める人に向けたテレワークの拠点としてシェアオフィスを整備するなど、地域住民の生活に合った活用法を提案することが成功の鍵だと話した。(阿)

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