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2022年 3月8日
「子目線」で出自話す親の選択
東京「生殖医療と出自を知る権利」
第三者による精子や卵子の提供で子を授かる女性がいる。病院で生殖補助医療を受ける人もいれば、SNS上で「精子提供」者を探す人もいる。精子提供を申し出るSNSのアカウントはツイッターだけで数百件に上る。
小嶋麻友美社会部記者は生殖医療技術やSNS上での精子提供について「子を望む親側の意向が優先されてきた。遺伝子上の親を知る『子の権利』は置き去りにされている」と指摘。親と子それぞれの立場から当事者らの思いを報じた。2月20日付朝刊から全3回。
愛知県の望月有花さん(38)は病気で自然妊娠が難しかった。タイ人の女性から卵子提供を受け3人の子を授かった。周囲から子に出自を隠すよう説かれたものの「親の都合で黙っているべきではない」と考えた。
幼いころから子に女性の写真を何度も見せた。「この人がいなかったらあなたに出会えなかったね。とっても大切な人」と書いた付箋を写真に貼った。子は「私たちは半分タイ人だもんね」と屈託ない。「親のエゴで産んだからこそ、全力で支えたい」(望月さん)。
一方、東京都の石塚幸子さん(42)は大学院生になるまで、自身が提供された精子で生まれたことを知らなかった。自分の人生が、出自についてそれまで伏せていた母の「うその上に成り立っている」ように感じ、苦悩してきた。
石塚さんにも取材していた小嶋記者は、望月さんの考え方を「子供目線」だと感じたと振り返る。一方で、子に出自を隠すことが「家族の幸せ」と考え、告知をためらう親は多いとみる。
記事では「家族の始まりを共有する」ために告知が必要だとする当事者団体関係者の言葉も紹介。小嶋記者は、子の権利を守りながら家庭を築くためには「社会が多様な家族の在り方を認める必要がある」と説く。(浅)