2022年 6月28日
進学支援拡充 情報発信が鍵

福井「共生の学び舎 ふくい 日系外国人の高校生たち」4月6~12日(全4回)

 日系ブラジル人4世の中島明美さん(17)は2019年にブラジルの中学校を卒業し、翌年に両親と越前市に移住した。日本語が堪能でない中、市内で学習支援を受け高校受験に備えた。しかし、既に中学校を卒業していたことが理由で、日本語指導が必要な外国人向け入試枠の対象にならなかった。受験科目の多い一般入試を受けるしかなく、合格まで「毎日不安だった。ずっと緊張していた」。

 報道部の堀英彦記者らが、外国人の子供の進学に対する支援が不足している実態などを報じた。福井労働局によると、県内の外国人労働者は21年10月末時点で過去最多の1万524人。堀記者は「外国人の子供は今後の地域社会を支える存在」だとみる。こうした子供たちの進学を阻む課題について、連載を通じ読者に考えてほしいとの思いがあったと説明する。

 地域の子供に食事を無償で提供する「みんなの食堂」(越前市)は外国人向けの学習支援にも取り組む。食堂を継続的に取材していた堀記者。教員OBがボランティアでブラジル人の小学生に日本語を教える様子を見て「民間での学習支援の大切さを感じた」という。それが連載のきっかけになった。

 みんなの食堂を運営する野尻富美さん(53)は多くの外国人の子供と関わってきた。中島さんの受験の準備にも奔走した。堀記者の取材に対し、親が日本の教育制度を理解していないために、進路を巡る情報の収集が子供に任せきりになる傾向があると答えた。堀記者は連載で「日本語ができない親を想定した情報発信も必要」との野尻さんの意見を伝えた。

 「高校進学に対する親の考え方や金銭感覚は、日本人と大きく異なるとの指摘が多い」とも報じた。その上で「高校を卒業することが、日本では職業の選択肢を増やすことにつながると親たちに周知する必要もある」(堀記者)と今後の課題を挙げる。(遼)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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