2022年 8月23日
非行少年 「生きづらさ」に焦点

神戸「家裁調査官が行く」7月19~8月1日(全10回)

 19歳のリサは家出中に覚醒剤の使用で逮捕され、家庭裁判所にやって来た。全ての少年事件が家裁に送られる。家裁では、「家裁調査官」が少年の非行の背景を調べる。裁判官が少年審判で適切な処遇を決められるようにするため。リサの調査は40代の調査官ヤマダが担った。ヤマダは「話すことなんてない」と挑発的な態度をとるリサに近づいては離れるように面接を重ね、薬物を始めた頃の家庭に焦点を当てていった。

 調査手法は本人や保護者との面接や関係先に対する情報収集など。審判も少年の更生を目的とする。丹波総局の那谷享平記者は、矯正教育に臨む少年少女と向き合う調査官を取材。「非行に走る子供が抱える『生きづらさ』に寄り添う姿を伝えたかった」と説明する。

 リサは幼い頃から、結婚を繰り返す父の女性関係に翻弄されていた。家庭が安息の場でなく、中学に入ると生活が荒れ始めた。地元の不良仲間との関係に居場所を見いだそうとして大麻を覚え、やがて覚醒剤を乱用した。

 ヤマダは「異質な家庭に生まれ、ずっと『自分は何者なのか?』『本当の家族なのか?』という葛藤があったはず」とリサの心境を思いやった。リサにとり「薬物依存は生き残りの道だった」との考えに至った。リサとの計約10時間に及ぶ面接を経て「少年院での教育にゆだねるしかない」と判断。裁判官が審判で少年院への送致を決めた。

 那谷記者はリサについて 「絶望ではなく希望をもって伝えたい」と連載に記した。周囲からの支援を受け立ち直る若者を見てきたヤマダが「自分に価値を見いだせるように」とエールを送る姿を報じた。「罪を犯した若者が社会でやり直せる可能性を示したかった」(那谷記者)という。

 那谷記者は非行少年について「特別な存在ではない」と強調。調査官が聞き取った彼らの声を通じ、読者にも「身近に感じてほしい」と話した。(直)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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