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2022年 9月27日
多様化するスポーツ環境探る
京都「ブカツは今 かわる運動部」7月21~29日(全6回)
「高校に入ったらハンドボールをやめようと思っていた」――。大学でハンドボール部に所属する女性(18)は競技を嫌いになりかけた経験を持つ。初めて「勝利至上主義」に触れたのは小学生の頃。指導者が厳しく、練習で失敗すると一方的に叱責された。ある夜、パスの失敗を契機に、真っ暗なグラウンドで練習を命じられた。しばらくして、チームメートは半数に減った。
学校の知名度向上を目的とした勝利至上主義などにより、学校の部活動が揺らいでいる。計12人の運動部・報道部合同取材班が子供のスポーツ環境を支えてきた部活動の課題に迫った。連載を統括した運動部の小西貴久記者は、取材のため地域の学校を回る中で「勝敗と同じくらいプレーの楽しさを重視する子供もいる」と感じたことなどが出発点だと説明する。
ハンドボール部の女性は中学でも部活動が楽しいと思えなかった。強豪として知られるチームで、うまい選手が優遇される「暗黙の序列」があると感じた。試合でもパスが回ってこなかった。それでも高校でハンドボールを続けようと思ったのは、先輩たちが「楽しそうにプレーしていたから」。自分が楽しいと思って取り組む方が成長できると感じたという。
連載では「教育行政の視点も必要だと判断した」と小西氏。スポーツ庁の有識者会議が6月、公立中学で休日の運動部の指導をスポーツクラブなどに委ねる「地域移行」を提言したことにも触れた。京都府舞鶴市で実施された地域移行モデル事業で、会社員や小学校教諭が市内外の中学校の剣道部員約30人を指導する姿を紹介。生徒の「いろんな先生から指導を受けることで成長できる」との声を報じた。
小西氏は部活動の地域移行について「地域全体で子供のスポーツ環境を整える意識を育む第一歩だ」と捉える。連載は「子供が目的に応じてプレーできる場を増やすためにどうすべきかを考える契機にしてほしい」という。(遼)
※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)