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2022年 11月22日
外国人との「隔たり」に警鐘
上毛「潜む不法滞在者――伊勢崎で今」10月20日~22日(全3回)
「何をされるか分からない」――。報道部の高野聡記者と地方部伊勢崎支局の村上真代記者によると、群馬県伊勢崎市の住民の間で市内に住む外国人に対する「負の印象」が広がっている。山梨県警は8月、伊勢崎市に住むベトナム人2人を不法滞在容疑で現行犯逮捕。その後、2人を茨城県などで果物を盗んだ疑いで再逮捕した。2020年夏に群馬県などで家畜が盗まれた事件では、群馬県警が不法滞在のベトナム人を摘発していた。
両記者は、事件取材で外国人の関与を示す証拠がないにもかかわらず、住民が「この辺りは外国人が多いから」と口にする場面に出くわすことがあるという。外国人への偏見に加え、地域の担い手である正規滞在者に悪影響が及ぶことも懸念する。「地元住民が抱える不安を報じることで、県に不法滞在への対策を講じるよう促したい」(高野氏)との思いから、伊勢崎市の現状に迫った。
群馬県の発表では、伊勢崎市に住む正規滞在の外国人は約1万3千人(21年12月時点)。県内の市町村で最も多い。不法滞在者はこれに含まれていない。県警の捜査関係者によると、働き口や同言語の仲間を頼って来る不法滞在者が増えているという。
連載では、「外国人を受け入れるなら、もっとしっかりした態勢を」などと訴える捜査関係者の声を取り上げた。捜査関係者は不法滞在者と直接関わる中で、借金を返すまで帰国できないなどの個別の事情を把握していると高野氏。捜査関係者の目線から読者に提示することで「不法滞在は県や国が対処すべき社会的な問題だと訴える狙いがあった」と話す。
正規滞在者の声も伝えた。ベトナム人であり伊勢崎市で30年以上生活する山本雄次さん(通名)の「罪を犯すのは一部だけど、同じ国の人だと寂しい」などの思いを報じた。村上氏は「外国人だという理由だけで『隔たり』を作るべきではないと読者に伝えたかった」と振り返る。(遼)
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