2022年 12月6日
障害者と家族守る仕組み問う

岐阜「ドキュメント警察官通報――精神疾患とわたしたち 第1章『他害』」10月13~19日(全6回)

 精神保健福祉法に基づく「警察官通報」は、精神疾患の症状で自分や他人を傷つける恐れがある人を見つけた警察官に保健所への通報を義務付ける制度。保健所は精神保健指定医による「措置診察」の要否を判断。診察に至った場合、都道府県知事の権限で精神科病院に強制入院させることもある。

 2020年度の岐阜県の警察官通報は200件。このうち、指定医の診察に至ったのは11・0%にとどまり、全国平均(5割前後)を下回る。統合編集局報道本部の山田俊介記者ら3人の取材班は、警察官や関係者、当事者家族を取材。強制入院に対し県保健所が持つ抵抗感などから、精神保健福祉法が定める仕組みが十分に機能していない可能性を指摘した。

 山田氏によると、県保健所は診察率が低い理由を説明していない。県保健所が診察に「消極的」であることのしわ寄せは当事者、その家族、警察官に及ぶことがある。

 通報や診察に至らない場合、警察官が精神科病院に掛け合い、家族の同意を得て入院させる「医療保護入院」につなぐことがある。連載では、統合失調症の男性が入院する際の身体拘束に同意を求められ「承諾するしかなかった」家族の思いを伝えた。男性は退院後、入院生活で抱えたトラウマへの「恨み」を家族に向けるようになったことも紹介した。拘束を容認しなければならない立場に置かれ「尊厳を傷つけられた」との家族の声も報じた。

 山田氏は医療保護入院について「当事者家族の中でも意見がわかれる」と説明。「当事者家族の苦しみは社会に共有されていない」と指摘した。

 県は11月30日、県保健所による診察の要否判断が適切かなどを検証する会合を来年度に新設すると発表した。山田氏は連載を通じ「誰もが生きやすい社会の実現に向けた後押しができたのではないか」との手応えを語る。(浅)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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