2023年 10月10日
自由な選択阻む先入観に警鐘

北日本「今を解く 工学部の女子枠」 9月19~20日(全2回)

 富山大(富山市)は今年度の工学部の入試に女性を対象とした推薦枠「女子枠」を設けた。女子枠は国が「理工系女子」を増やす方針を掲げる中で導入を促している。富山大は枠の設置により、工学部入学者に占める女性の割合が高まった。ただ、入学した女子学生からは「女子枠が理由で受験先を決めたわけではない」との声が上がる。県立高の進路担当教諭も、女子枠によって「工学部を目指す女子が増えたわけではない」と話す。

 女子枠創設は工学部の女性を増やす起爆剤になるのか――。社会部の藤田愛夏記者、吉田野乃花記者が学生や大学関係者に本音を聞いた。

 森香帆さんは今春、富山大工学部の機械工学コースに入った。幼い頃からものづくりが好きで「工学部以外の受験は考えなかった」と藤田記者の取材に答えた。中学校から工業高校に進む際には、「女子は少ない」と心配していた中学の教員らが森さんの熱意を理解し背中を押してくれたという。他方、迷った末に「男子ばかりの環境で過ごせる気がしない」と普通科を選んだ友人もいた。

 藤田氏は「性別によって、割り当てられる仕事や好きなもののイメージが違うことがずっと疑問だった」との森さんの思いを連載で紹介。「周囲の大人が持つイメージが進路選択に影響している」と考えた。女性の志願者を増やすという女子枠の効果は「未知数」と捉えた。

 その上で、女性が理工系への進学を避けるのは社会環境によるところが大きいとみる東大・横山広美教授(科学技術社会論)に取材した。横山教授は「女性は数学ができないという誤った認識」などが問題の根底にある可能性を示した。藤田氏は国や大学に加え、家庭や学校でもこうしたイメージを払拭するなど、「女性の理工系進学を阻む要因を根本的に取り除く必要がある」との横山教授の指摘にも焦点を当てた。(遼)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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