2024年 2月27日
居場所探す声に光当てる

北海道「さまよう若者 消えた『たまり場』」 12月27~30日(全3回)

 札幌市営地下鉄大通駅コンコースの広場は、児童養護施設で育ったユウト(20)ら家庭や学校で居場所を失った十数人の若者にとり「たまり場」だった。しかし、昨年4月、飲酒や喫煙などの迷惑行為が相次いだために一部が閉鎖された。行き場を失ったユウトは12月、街をさまよった末に市内の繁華街ススキノで60代男性への暴行容疑で現行犯逮捕された。

 たまり場に集っていた若者が抱える「生きづらさ」。報道センターの矢野旦、三島今日子の両記者が取材した。たまり場を「若者が似た境遇の仲間を互いに受け入れ、安心できる場所」と位置付けた。矢野氏は若者について「親をはじめ周囲の大人から疎外されている」と説明。読者らに対し行き場を失った若者の声に耳を傾け、支援の形を考えてほしいと力を込めた。

 アヤノ(16)はたまり場を離れた後、高校を辞めた。売春で稼いだ金をススキノにあるメンズパブに費やす。「支払いが多ければ朝まで一緒にいてくれる。愛されていると感じるの」――。矢野氏はアヤノについて「居場所を求めるSOSが大人に届かなかった結果、売春に追い込まれた」とみる。

 連載は親や社会に反発する若者が繁華街に向かう理由にも触れた。「『誰にでも受け入れてもらえる』という感覚があるからだ」との飯田昭人・北翔大教授(臨床心理学)の見方を伝えた。

 矢野氏は「若者が安心できる居場所を作ることが先決だ」と語る。売春をやめるために若者が相談できる立ち寄り所を開設したNPO法人代表の坂本新さんにも取材。NPO法人、行政など「多くの人で一人の若者を支える形が必要」だとする坂本さんの指摘を報じた。

 記者としての支援の在り方について「若者の声を伝えること」だと矢野氏。昨年4月から若者を取材してきた。その経験を踏まえ、若者の本音を引き出すには「『近所のお兄ちゃん』のような感覚を意識して接することが大事だ」と話した。(遼)

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