2024年 6月25日
運送業 働き方改革の実態

北日本「変革へ 富山2024年問題」 6月6〜8日(全3回)

 働き方改革関連法に基づき、運送業、建設業などで4月、時間外労働の上限規制が始まった。富山県内で運送会社を経営する男性は「仕事は楽になり、家計は苦しくなった」とつぶやく。運転手の数は変わらない一方で、1人がこなせる仕事量は減った。会社の業績悪化に燃料費などの高騰が追い打ちをかけ、1人当たりの月給は平均で5万円下がった。

 政経部・経済班の谷井康彦記者が県内の運送と建設の現場を取材。人手不足や収入減が懸念される「2024年問題」への対応を急ぐ地元企業の取り組みを追った。高速道路の利用を原則とし、運転手の労働時間の短縮を図る運送会社などを紹介した。その上で、変化に戸惑う現場の働き手や、改革の趣旨を語る識者の声にも焦点を当てた。

 高速道路での大型トラックの最高速度が輸送効率の向上のため引き上げられた。連載は、これについて「事故のリスクが高まる」と指摘し、運転手の労働環境を守る改革の本筋を忘れてはならないと強調する社会保険労務士の訴えを載せた。この社会保険労務士はバスなどの運転手として26年働いた経験を持つ。改革を急ぐあまり、現場に負担がかかることへの危機感を示した。谷井記者は「心身に優しい働き方の大事さに気付いた」と振り返る。

 全産業平均と比べ、運送業の労働時間が約2割長く、賃金は約2割低い傾向にあるとの結果も取り上げた。これを「構造的矛盾」とした上で、「存在意義と社会的価値が釣り合っていない」と嘆く運送会社社長の声も報じた。

 消費者の輸送コストに対する意識にも言及した。多くの通販サイトで表示される「送料無料」の文字が、こうした意識の希薄につながっているとの懸念が挙がっていると伝えた。谷井記者はその上で「持続可能な物流を支えるには、消費者が運送に対価を払う必要があると、読者に理解を求めたかった」と話した。(阿)

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